病名が分からない飼育魚の生存率を飛躍させる病気治療について「淡水・海水共通」

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水槽という閉鎖的空間で飼育していると飼育本やインターネット情報のどこにも載っていない病気にかかることも少なくありません。
手当たり次第に治療して偶然治ることもまれにありますが、ほとんどは助からなかったケースが多いように感じます。

Kyo
Kyo

防疫に長けた水産業者ですら顕微鏡や検査でも病原体を特定できないことがあるのに、検査器具も疫病学の知識も乏しい一般のアクアリストや店舗販売者が的確なアドバイスが出来ないのは無理もありません。

そこでkyoは予想や憶測では無く、病名判断よりも病気症状全般を幅広く治療でき、段階順に病原体の種類を判断する画期的な治療手順を考案しました。
自身の治療ケースを含め、病名不明の病気に対し、最初に行うべき治療と段階別治療について順に解説いたします。
※記事本文中に出てくる治療手順はkyoが過去に水族館に出入りしている知人の水産獣医師、魚類防疫士と治療討論し出た案、アドバイスしてもらったもの、防疫学観点から考案したものなどを含んでいます。

この治療手順は治療開始から全段階に進むまでを1週間を目安に行います。
期限を設けるのは、ダラダラ治療すると耐性菌・ウイルスが出来てしまい、たいていの薬剤が効かなくなってしまうことと重症化を防ぐためです。
では、以下流れに沿って記載していきます。

治療前準備:最初に試す治療法と準備について

まずは魚病薬を浸透しやすくするため治療環境から整えます。
雑菌、細菌類を全部まとめて手当たり次第に滅菌するために、まずは飼育水の1/2交換&濾過槽、ろ材、底砂を全てまとめて根こそぎ洗浄します。

Kyo
Kyo

バクテリアが消えると残念がられるかもしれませんが、バクテリアの何十倍も菌は繁殖し、すでに浄水作用はありませんので、ご心配なく。

汚染した濾過槽と底砂をそのままにしておくと、そこが菌の隠れ家になり、どんな魚病薬も効きにくくなるので濾過槽と底砂は水道水と逆性石鹸でヌメリや洗う場所が無くなるまで徹底洗浄。水道水の塩素、逆性石鹸の陽イオン作用により殺菌消毒できます。

逆性石鹸という名ですが、石鹸では無く医療機関の器具洗浄、水族館や水産養殖場でも使用されている殺菌消毒剤です。
薬局で売っていますが商品が見つからない場合は、ベンザルコニウム塩化物液、塩化ベンゼトニウムという記載があるものを選んでください。

Kyo
Kyo

逆性石鹸「ベンザルコニウム塩化物液」は第3類医薬品なので、誰でも使用できます。直接触れると手荒れするので手袋着用で使用してください。

逆性石鹸を使用した飼育用品は再度水道水で十分ゆすいで薬品を落としてから飼育水槽に器具をセットしてください。
ろ材やウール、低砂も濾過槽も洗浄し綺麗な状況になったら魚病薬が本来の力をしっかり発揮してくれ、肺や内臓が破壊されて治療困難な状態でさえ無ければ、たいてい治癒回復に向かっていくと思います。洗浄するのとしないのとでは、その後の治癒のスピードが段違いなので、魚病防疫学の凄さと魚病薬の優秀な効き目をしっかり実感出来ると思います。

・ろ材、ウールマットは水道水で徹底洗浄、逆性石鹸は使わない
・濾過槽、パイプ、ホースなど飼育器具、底砂は水道水と逆性石鹸で徹底洗浄
洗浄後は再度水道水で薬品をしっかり落とした後、飼育水槽に再セット

治療第1段階:GFG顆粒でトリートメント浴を行う

洗浄して綺麗になった水槽にGFG「グリーンFゴールド顆粒」で薬浴をします。
GFGを使う理由はサルファ剤とフラン剤の混合薬剤なので、幅広い病原体に効くから。
サルファ剤が効かない耐性菌がいた場合でもフラン剤が叩いてくれます。
GFGが治療対象外の病気でも不思議とよく効くのは、このおかげです。

使い方としては薬浴する水槽に直接ではなく、飼育水をくみ取った別容器によく溶かし、その薬水を飼育水にゆっくり注水して使用してください。

※魚病薬の効果を最大限に効かせるには酸素が必須です!
薬浴中は薬剤が水中の酸素を大量消費するので、魚が呼吸困難にならないように酸素供給を必ずしてあげてください。
詳しくは「魚病薬の効果を最大限にする~」で解説参照

治療第2段階:マラカイトグリーン浴+プラジクアンテル浸透食に切り替える

GFG顆粒浴3日経っても回復に向かわない場合は、寄生虫「原虫、線虫、吸虫等」による養分吸収や臓器損傷だと判断し、魚病薬をマラカイトグリーン液に切り替え、餌を食べるならプラジクアンテルを染みこませて与えます。※食べられないなら水産用ハダクリーンを使用。これを2日間行います。

マラカイトグリーン液は真菌

プラジクアンテルは線虫・吸虫など寄生虫の駆除に効きます。

衰弱してエサを食べられない場合は水産用ハダクリーンで薬浴します。
プラジクアンテルもハダクリーンも非常に水に溶けにくいため、完全に溶けきるまで根気がいりますが、何度もしっかりかき混ぜて使用してください。

イカリムシやウオジラミなど甲殻類の寄生虫にはデミリンが効きます。
詳しくは寄生虫駆除の記事参照

治療第3段階:グリーンFクリアーで最終治療

2段階までで効果がみられない場合は、細菌類や寄生虫類ではなく、おそらくウイルスか抗酸菌が感染原因です。
ウイルス治療にはグリーンFクリアーが有効です。

成分の二酸化塩素がウイルス、抗酸菌を叩きます。
塩素中和剤を一緒に使うと薬の効果が無くなるので、ご注意を!

ここまでの治療段階に進んでも全く改善しない場合は市販の魚病薬成分では治せないもの、遺伝性疾患、ガンや臓器破裂など治癒が困難なものの可能性が高いです。
自身で治せないと判断したら、近くの獣医師さんに相談してみましょう。
どうしても助けたい熱意を向けると診断にて動物病院で処方出来る治療薬「抗生物質など」を出す、手術検討などをしてもらえると思います。
なので、困ったときは近隣の動物病院を訪ねてみてください。

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金魚、メダカなど冬越出来る魚には低水温療法が最後の切り札

飼育魚が冬越し出来るメダカや金魚である場合は、低水温で飼育魚の活動機能を冬眠させ、GFG顆粒などを薄く色づく程度入れて病原体の栄養源と活動を不活性化させるのも効果的です。
冬越出来る淡水魚は概ね水温8度以下で冬眠に入ることが分かっています。
冬眠により全身機能低下するため病原体にとっては吸収できる栄養分を補給出来ない為、魚から離れて水中を漂うか衰弱していきます。
また多くの病原体は魚が生存できるくらいの高水温よりも低水温に弱く、ほとんどの場合水温10度以下では活動を停止、寄生虫ならシスト「さなぎ状態の様なもの」となり、動かなくなります。

低水温になるほど水槽内の溶存酸素量は増えるので、魚病薬が薄くてもよく効き、尚且つ病原体は衰弱しているので更によく効き、多くの病原体は死滅か寸前のところまでもっていけます。そうなったら濾過槽のウールマットである程度は、こしとれるので、3~4日置きにウールマットを交換してあげると水槽をリセットしないでも病原体をほぼ全滅させられます。

まとめ・注意点

・耐性菌が出来てしまうので治療開始から最終段階に進むまでは1週間を目安にする
・汚染した濾過槽と底砂は徹底洗浄してから薬浴を開始する
・細菌→真菌→寄生虫・原虫→ウイルス・抗酸菌と段階的に判断、治療を進める
・治療を進め改善がみられないなら、獣医師に相談してみる
・餌を食べれて落ちる心配が無さそうならラクトフェリンを与えてみる
・メダカ、金魚、鯉など冬越出来る魚には冷水浴が最後の治療手段

簡単に箇条書きでまとめると上記の様な感じです。

治療全般で共通して言えることは水温を上げないことと活性炭や塩素中和剤は使わないこと!水温上昇は病原体が弱るより遥かに病魚を衰弱させ、活性炭や中和剤は魚病薬の効果を弱めます。詳しい機序は省略しますが、水道水に魚病薬を溶かした薬水が飼育水の病原体とくっつき塩素そのものが無害化するので、中和剤は無くてもOKです。
※全てリセットしたり、新規トリートメント水槽を作った場合は、1/3ほど中和剤を入れてください。

名が知れている病気は氷山の一角であり、病原体の種類は数百を軽く超えています。値段の安い魚も高価な魚も飼い込めば愛着のある大事な命。
病気や違和感が出た時は早急に治療開始して、ぜひ救ってあげてください。
あなたと飼育魚がこれからも同じ時間を過ごすために、この記事が役立つことを信じて最後に致します。ご覧いただき、ありがとうございましたm(_ _)m

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