メダカや金魚に多いガス病の危険性と予防について

メダカ・金魚
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ガス病は聞きなれない病気ですが、メダカや金魚、コイなど藻類が大量発生しやすい水槽や池で特に発病しやすく、発病し進行すると一晩で全滅になるほど怖い病気です。魚病薬も効果が無いため、対処法を間違えると飼育魚を落とします。

ただこの病気は発病原因がある程度判明しており、予防法も簡単なので、正しく防げば発病することはほぼありません。「池を除く」

その予防法と発病原因について中心に記載しています。

※見出し画像「アイキャッチ」出典元:魚病情報資料/公益社団法人日本水産資源保護協会/写真提供:泉庄太郎教授

Kyo
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海水魚の場合は淡水と条件が少し変わるので、最後に記事を書いています。

原因と症状

飼育水中の溶存窒素または溶存酸素の過飽和が原因です。

ガス病は主に2つに分かれ、窒素の過飽和で起きるものを窒素ガス病、酸素の過飽和で起きるものを酸素ガス病と呼びます。

Kyo
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過飽和とはザックリ言うと水中に最大限物質「窒素や酸素」が溶け込んでいて、それ以上に溶け込み切れない物質であふれている状態のことです。

窒素ガス病は水中の窒素飽和度が 120~130%に達すると2週間でガス病症状が現れるとされ、発症した飼育魚は対処しないと高確率で落ちます。※1

酸素ガス病は水中の酸素飽和度が300%以上になると起こりやすいとされており、400%以上の酸素飽和度に達すると高確率で発生するとされています。※1

Kyo
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溶存窒素の過飽和は地下深くの井戸水で起きやすいとされ、溶存酸素の過飽和は藻類や水中植物が大繁殖した水中で起きやすいです。

近年話題になっているグリーンウォーターなんかは植物プランクトンが無数に湧いた水なので、メダカ稚魚などの成長を助ける反面でガス病にもなりやすくなります。

窒素ガス病の特徴

飼育水中に充満した窒素がエラを通して血液中に取り込まれ血管内で気泡となり、その気泡が内部の各器官、各血管、エラにガス塞栓を引き起こし重症化すると血管が詰まる疾患です。

血管が詰まることで血流障害や組織や細胞の壊死が起こり、生存できなくなり☆になります。

外観的には各ヒレ膜「ヒレ筋の間にある膜」、頭皮、眼窩内やエラ血管内に気泡が生じたり、ガス分圧が上昇することや呼吸苦で浸透圧調整できないことにより眼球が突出することもあります。

窒素ガス病の症状と経過

病魚は狂ったように泳ぎ回る、水面へ浮上するといった異常を呈した後、☆になります。

発症から落ちるまで急激に進行することが多く,前日まで異常も無く元気に過ごしていた魚が数分~数時間で☆になることもあります。

体内に取り込まれた多量の窒素は「魚体組織で消費されることが無い※2」ため、進行が大きく進んだ魚では手の施しようが無く、救うことが困難であるため、発病しない様に予防することが最重要になります。

酸素ガス病の特徴

酸素ガス病でも各血管や眼窩内、頭皮に小さな気泡を生ずることがあるが、窒素ガス病のようにガス塞栓を起こすことはありません。

生理学の小難しい話になりますが、簡単にそしゃくして言うと血管動脈内の酸素分圧の上昇によってエラ換水量が低下し血液中の二酸化炭素分圧が上昇、結果として血液中のPH が低下する呼吸性アシドーシスによる障害が起きます。

Kyo
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ざっくり言えば二酸化炭素が吐き出せない呼吸困難な状態のことです。

外観的には各ヒレや表皮下、エラ蓋、眼の周囲に発生した気泡が観察できます。

出典:魚病情報資料/公益社団法人日本水産資源保護協会 写真提供:泉庄太郎教授
出典:魚病情報資料/公益社団法人日本水産資源保護協会 写真提供:泉庄太郎教授

酸素ガス病の症状と経過

窒素ガス病のように血管が詰まることは起こりにくいので、窒素ガス病より進行速度・症状が軽いことが多いが、呼吸苦を起こすため窒息することがあります。

酸素ガス病単体の発症では☆になることは少ないですが、重症化すると転覆症状や立ち泳ぎ症状なども出てくるため、摂食が出来なかったり魚体が空気にさらされ乾燥し皮膚が腐る、感染症を起こしたりするため、結果として2次感染で☆にしてしまうことがあります。

転覆病、立ち泳ぎ病については、こちらで詳しい解説記事を書いています。

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治療について

両方とも軽症であれば、飼育水ごと病魚を汲み出し、強力なエアレーションをかけながら1/2水換え+水温を3度ほど下げると症状が緩和し回復に向かうことが多いです。

翌日以降も症状が続いている場合は継続してエアレーションを作動させ、1/2の水換えを行います。

Kyo
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夏の水温が30度以上ある飼育水であれば、翌日以降も3度ずつ水温を下げて熱帯魚なら25度まで、それ以外なら一日3度までを下げる上限として20度以下まで下げましょう。

水温が低くなるほど溶け込める酸素量は多くなるので、飼育魚が適応出来る最低ラインまで最終的に下げてあげると効果的だよ。

メダカや金魚であれば飼育魚のみを取り出し、飼育水温と合わせカルキ抜きした水道水の中に移します。この新水には必ずエアレーションをかけておくこと。

エアレーションによる酸素供給では溶存酸素の過飽和は起きないとされているため、エアレーションをかける方が魚の呼吸を楽にし生存率が上がります。 ※ネット記事の中にはエアレーションが過飽和の原因と書かれていることがありますが、「エアーポンプなどの酸素供給では起こりません※3」ので安心してください。

Kyo
Kyo

光合成で呼吸する藻類や植物プランクトンの代謝以外で酸素の過飽和は起こらないとされているので、安心してエアレーションしてください。

メダカや金魚は丈夫だけど、引っ越し先の水はPH値も合わせておいた方が安心です。
確実な安全性を求めるなら、ぜひPHも合わせて水質ショックを防いでね。


PHは試験紙や測定器で簡単に測定できます。試験紙を使う場合は数値が大まかになりやすく誤差が出やすいので、測定器がオススメです。

重症化した場合の治療法

進行しエラ呼吸が出来ていない、水面に浮かんで沈まなくなるなど重症症状が出ている場合は早急に飼育魚を別容器に移してください。
移した容器の水は新しくカルキ抜きしPHを合わせた水道水にします。
PHを合わせた汚濁の無い水であれば余程のことが無い限り水質ショックは起こりません。それよりも過飽和になった水に注水し調整する方が病魚は浸透圧の調整が出来ない、水質ショックが起こりやすいので、PHを合わせた真新しい水の方が生存率を高め、まだ望みがあります。

予防について

飼育水の溶存酸素を測定して過飽和であることを確認することが診断の手助けになります。

溶存窒素の測定はガスビュレット、DN計等の特殊な機材が必要になるため、正確な数値を測定することは難しいですが、以下に紹介する機序で発生するため、それらを読んで対策を立てることで予防することが出来ます。

溶存酸素過飽和させない方法

定期的に水換えと濾過槽掃除、餌の食べ残しやフンを取り除く、養殖池を遮光したりすることで藻類の繁殖を抑えることや、水温を下げて溶存酸素飽和度を低下させることで発症を予防できます。

メダカ飼育でよく使われるグリーンウォーターも正しく作れば、あまり問題ないようですが、きちんと管理できていないとアオコなど水中藻類が増えすぎたり、植物プランクトンの大増殖で溶存酸素を過飽和させてしまいますので、ご注意ください。

溶存窒素を過飽和させない方法

溶存窒素は主に水草や藻類の枯葉、大量の植物性プランクトンの遺骸、底砂を厚く敷き詰めたものや濾過槽を長い間触らなかったために硫化水素が水中に溶けだした時などに大量発生します。

水の還元作用は好気性バクテリアと嫌気性バクテリア両方の働きにより、有機性窒素「タンパク質」→アンモニア窒素→亜硝酸窒素→硝酸性窒素を経て窒素ガスになり水中から空気中に排出されます。この過程を脱窒作用と呼びますが、水の還元濾過システムが上手く働いていないと水中に上記物質や窒素ガスが空気中に排出されないまま残り、溶存窒素として蓄積していきます。これらが蓄積し続けたり、硫化水素が水中に大量に漏れ出すと呼吸苦→呼吸困難となり窒息します。そのため、溶存窒素を過飽和させないためには、腐敗物を放置しないこと、掃除や管理メンテナンスをサボらないことが大事になります。

底砂を厚く敷いている水槽では定期的に上記の様な排水ホースで掃除をすると良いです。

濾過槽メンテナンスの手間を楽に簡単にしたい方はバイオラボトット社の商品がオススメです。

上記商品は西日本用のものなので、東日本にお住いの方は50Hzを選んでください。

まとめ

溶存酸素過飽和は藻類発生を防ぐこと、溶存窒素過飽和は腐敗物を溜めない、硫化水素流出を防ぐことで、ある程度予防できます。
要は常に濾過された水質を維持すること、飼育水を古くしないことです。
万一ガス病になった時でも水を爆気「エアレーション」、水換えで飽和量を減らせば良いので、ガス病が疑われる、当てはまる環境になっていれば、ぜひこの記事の内容を参考に予防・治療を行ってみてくださいね(^^♪

参考文献

※1 公益社団法人日本水産資源保護協会 魚病情報資料

※2 魚病研究4(1)1969.9 溶存酸素過剰に因る魚のガス病について

※3 月刊錦鯉97年7月号 連載・魚病ノートNo.16

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