金魚、熱帯魚を飼育していると水面まで風船のように浮かんだり沈んだりして上手く泳げなくなる病気が転覆病です。 琉金やらんちゅう、プラティやモーリー、ダルマメダカなど丸い体型をした鑑賞魚に起こりやすい病気ですが、ベタやテトラ類など全ての観賞魚にも起こります。
この記事では転覆病の主な原因、原因別治療法、再発予防について主に紹介しています。
記事更新・追記「2023/3/28」
はじめに
転覆病は難治性と言われますが、例外を除いてほとんどは治せます。
例外:先天性異常や重度の臓器損傷、神経壊死など「後述」
ではなぜ難治性なのかというと、間違った治療選択をしているからです。
転覆病と呼ばれるほとんどは過食やエア食い、低水温や水温の変動、水質悪化や急変など不適切な日常管理により発症します。
これらは転覆病というより、転覆症状です。
・例を言えば餌を食べて転覆→その日のうちに元通り。
・日が経つにつれ遊泳異常が現れた→転覆、底に沈むなど。
これらに対し適切な処置を行わず、間違った塩水浴や民間療法に頼る為に重症化させています。
よく治療法として挙がるエプソムソルトなら、まだ的は外れていませんが、治療のために高水温にする、ココア浴など理にかなっていない民間療法は飼育魚に大ダメージを与えます。
水温を上げると代謝促進、免疫機能活性化させる。確かにその通りだと思います。
しかしこれは健康な時の日常的な病気の予防、重症化していない白点病や便秘症状などに有効であって、衰弱した魚には致命傷を与える行為です。
すなわち、日常の病気予防に有効、衰弱した病魚には危険と思っていてください。
ココア浴の危険性について
民間療法で特に危険なのはココア浴。
消化不良や転覆、腹水症状に効果がある治療法として見かけますが、圧倒的にデメリットの方が強く治療選択としてオススメ出来ません。
ココアに含まれるポリフェノール、リグニン、テオブロミンといった成分は魚のエラにダメージを与え、エラ病などすでにダメージを負っている場合は一気に悪化を助長します。
量の調節を少しでも間違えれば水質悪化により飼育環境を崩壊させることもあります。
化学、医学知識・作用を正しく理解し治療出来るスキルがある場合は例外ですが、無い場合は使用しないのが無難です。
ほとんどの病気治療に好んで使われている塩水浴も濃度を間違えたり、病気の特性を理解していないままのとりあえず治療だと水中に潜む病原菌や寄生虫をより元気にさせ転覆病に加えて尾ぐされ病などの2次的感染、水質悪化などで飼育魚をますます重症化させてしまいます。
どの場合に有効なのか病状に応じての選択や治療期間、管理法についてまで正しい知識と症状に応じた使い分けをすることが重要です。
では、下記より本題です。
転覆病の原因
転覆病の原因はざっくり分けると、3つのパターンで発生します。
1つはエア食いや食べ過ぎによる消化不良や浮袋の調節異常
2つ目は衰弱による遊泳異常「温度の急変、水質悪化など」
3つ目は神経損傷・壊死により元気なまま転覆するもの
主な症状
・頭部や腹部、尾ひれなどが水面に浮かんでくる、ひっくり返る
・水底で横たわったり、沈んだまま泳げなくなる
・斜めに泳いだり、横たわりながら泳ぐ などが症状として起こります。
続いて原因別の治療法の紹介
原因別治療法
進行度合いにより回復度が変わる為100%治せる確証はないですが、高い治療効果があります。早期発見・早期治療が大事です!
1つ目:エア食いや食べ過ぎによる消化不良や浮袋の調節異常
エア食いや食べ過ぎによるものが原因で転覆する場合、結論を言えば初期のなり始めた頃に餌切りやエプソムソルト浴でガス抜き、排便させれば、大半は治ります。
過食により消化不良を起こし腸内にガス溜まりやフン詰まりが起きる、餌と一緒に空気をたくさん取り込んだことにより一時的に平衡バランス機能が保てなくなっているだけなので、これらの問題を解決してやれば治るからです。
治療手順
餌切り+エプソムソルトor塩水浴を併用
餌をしばらく与えないことで消化不良を悪化させない、体力の温存に効果があります。
飼育魚が幼魚でない限り「例:メダカで1cm未満、金魚で5cm未満」は餌切りは有効ですが、幼魚は体力が持たないため普段与えているエサを1/5の量にして、1日4~5回に分けて与えます。難しければ1日2回、1回に与える量を1/3にして様子見します。
期間としては毎日健康な排便がみられるまで継続します。
フンが出ていても細切れ、半透明、白いフンなどは×。これ以外のフンを目安に。
幼魚の場合は今まで与えていた餌の量を1/5に減らして1日3~4回与えると良いです。
上記と併用してエプソムソルトor塩水浴を行います。
エプソムソルトとは硫酸マグネシウムのことであり温泉に含まれる成分です。
効能として飼育魚の浸透圧調整を楽にし、全身の筋緊張を緩和させるので呼吸を楽にし排便を促せます。
エプソムソルトは水量10Lに対し3g、塩は10Lに対し50gをよく溶かして入れます。
治療中は毎日水量1/3水換し、その都度減った水量分のエプソムor塩を追加投与してください。
上記治療で遊泳異常がみられなくなった+毎日排便をしていることの2つがクリア出来たら、みられるようになってから3日後以降に治療を終了します。
治療後も毎日1/3~1/4の水換えを行い、治療に使った成分を抜きます。
だいたい上記を4~5日繰り返すと抜け切ると思いますが、不安な場合は比重計を使用すると目に見えて分かるので安心です。
次に治癒後の再発予防として、フレークなど浮上性の餌を与えている場合は沈下性の餌に替えること。治ってもエア食いが起これば再発します。
オススメは沈下性の粒タイプ、持っていない場合は絶食の期間中に沈むタイプの餌に切り替えてください。
2つ目:衰弱による遊泳異常「温度の急変、水質悪化など」
飼育魚が弱りきることでも転覆症状や遊泳異常は起こります。
衰弱の原因は様々ですが、よくあるものとして
熱帯魚
金魚、メダカ、ベタなど
などが挙げられます。
これらから言えることは安定した水温とキレイな水を維持することが予防になるということ。不安定な水温や水質悪化の環境下では内部損傷「臓器、消化器など」、神経麻痺による転覆病を発病します。
治療手順
水質を戻すこと、水温を安定させることを優先させます。
1か月以上水換えを怠った場合
毎日1/5の少量ずつの水換えを行い、市販されている「てんぷく改善液」や「リバースリキッドゴールド」を規定量添加します。
どちらも効果的ですが、よりオススメは水質浄化作用もあり効果が高いリバースリキッド。 上記を症状が治るまで続けます。
濾過槽をずっと掃除していない場合
濾過槽を掃除します。水換えしても水質汚染の速度が勝るからです。
一度に全て取り替えると水質急変の恐れがあるので、数日ごとにメンテナンスしていきます。
例
1日目:ウールマットを変える
3日目:ろ材を半分洗浄「飼育水と水温、PHを合わせたカルキ抜き水で洗う」
5日目:もう半分のろ材を洗浄
水換えも濾過槽のメンテナンスも1か月以上していない場合
濾過槽掃除に加え、毎日水量1/8~1/10の水換えも行ってください。 主に水槽底に溜まったフンや汚れを吸い取ります。
上記に加えてクロマジェルを添加するとバクテリアの生存・増殖、水質浄化に役立ちます。
当方のホームページ上に紹介ページ有
使用者の口コミの多くに底砂の中や濾過槽内の汚れやヘドロが減ったという報告があるので、効果がある様です。
実際kyo個人も使用してみて、明らかにヘドロが減っていることに加え、汚れを凝縮させる効果もある様で、汚れが浮き上がったり、広がりにくくなって掃除が楽になった覚えがあります。
注意点
上記のどの方法を使うにしてもヒーターで水温を安定させ、エアーポンプなどでエアレーションをしっかりかけたうえで行ってください。
日常の水温に関しては熱帯魚なら水温を26度以上に保つ、それ以外は水温変動を無くすかつ水温に合わせた与える餌の量を調節することが予防になります。
メダカや金魚の場合は、水温に合わせて餌量を調節してください。
低水温の時に過食させると消化不良を起こします。
3つ目:神経損傷・壊死により元気なまま転覆するもの
これまでの2つのパターンに比べて圧倒的に治療難易度が高いです。
本当の意味で転覆病の治療が難しいと言えるのは、このパターンです。
元気に泳いでいたのに急激に遊泳異常や転覆、沈没が起こった場合は神経系異常や損傷による可能性が大きいです。
詳しい原因は不明ですが、先天性の遺伝子異常により起こる神経系異常、水質悪化による神経損傷や壊死、ウイルス性のものなどが推測されています。
治療法
獣医さんであれば浮袋の溜まった空気や腐敗物を注射器やメスで抜く、開腹手術を行い混合薬剤投与で2次感染予防しながら長期治療をするといった方法がとれますが、一般の方では困難です。
どうしても助けたい愛魚やアジアアロワナなど高価な魚であれば、観賞魚も診てくれる獣医さんを頼るのが最も良いかもしれません。
上記以外の方法であれば、誰でも行える治療法として「段階別魚病薬選択治療+低水温治療」が、まだ治療効果がありました。
段階別魚病薬選択治療
1段階目:メチレンブルー+グリーンFゴールド顆粒(GFG)による薬浴を行う「2日間」
2段階目:薬浴はグリーンFクリアーに変え、プラジクアンテルを経口投与する「2日間」
最終段階:低水温にしてメチレンブルーとGFGを規定量の1/5ほど薄く溶かし薬浴
1段階目
症状の特定の為、まずは混合薬剤で様子見します。
メチレンブルーは消毒剤として使えるうえに魚体に対してダメージが少なく、グリーンFゴールド顆粒はサルファ剤とフラン剤を含む混合魚病薬なので細菌類「グラム陽性球菌、陰性球菌含む」に抗菌作用が広く効きます。
この治療法で回復が見られない場合は、細菌感染によるものではないと判断し、2段階目に移ります。
2段階目
グリーンFクリアーは主に白点病治療用の魚病薬として使用されていますが、実はウイルス、真菌、原虫にも効果があるという優れもの!
主成分の二酸化塩素は強い活性酸素による殺菌作用があり、耐性菌も出来にくく、水草水槽にも使用できると製薬会社が公表しているほどダメージが少ない魚病薬です。
効果が弱いといった口コミが多いですが、それはカルキ抜きなど中和剤を使用したことにより薬効成分が消えたせいだと感じます。
薬浴にした理由はプラジクアンテルを経口摂取させるから。
プラジクアンテルとは水産専用の魚病薬であり、養殖場や水族館などでも使われている駆虫薬です。寄生虫、原虫などの駆除にたいへん効果がありますが、少量での販売が市場に出回らないため高価な買い物になることがデメリットです。
購入が難しい場合はグリーンFクリアーを経口摂取させてください。
プラジクアンテルは水にめちゃくちゃ溶けにくいので、完全に溶け込むまで混ぜて溶かしきってから使用してください。
最後の切り札!低水温+混合薬浴
これまでの治療法で変化が全くみられない場合は最終手段として低水温+魚病薬浴を行います。
※魚の新陳代謝を低下&病原体の進行速度を落とし、薄めた魚病薬で殺菌効果をもたせ2次感染症を防ぎながら自己回復力を向上させることを目的とした独自の方法ですので、実施する際は自己責任で行ってください。
あまり治療法として聞かない低水温治療のメリットは、溶存酸素量が増えて呼吸を楽にする、そして新陳代謝を低下させることと病原体の活動を鈍らせ病状の進行を食い止める、免疫とは異なる生体防御機能にて徐々に回復させられることです。
そして多くの病原体は10度を下回る低水温時に活動を停止させます。
水温を下げる場合は飼育水を大量に凍らせて、氷の状態にして水槽に放り込み冷却します。
元の飼育水を凍らせているので大きなPH変動による水質ショックを防ぎます。
水温を上げれば魚体の代謝が高まり回復力も高まりますが、症状の進行も早まります。
ピンポイントで原因が特定でき、的確で早急な短期決戦できる自信があれば打ち勝つでしょうが、確証の無い治療は重症化させるばかりか☆にします。
そもそも魚にはリンパ節が無く動物が持つような免疫防御機能が無いため、病原体の進行速度の方が圧倒的に早いです。
なので、治療薬に頼らず、病原体を休止させている間に魚本来が持つ回復力と生存能力にかけてみようというわけです。
魚種ごとに詳しく調べてから実践すること!
なおこの方法を利用する場合は、飼育魚の種類を調べて、耐えられる限界の水温を確実に把握しておくこと!熱帯魚やベタであっても同様です!
例えば金魚や鯉であれば5度くらいまでなら耐えられ、メダカであれば氷点下でも冬眠して耐えられます。
ただし急激に下げるのはダメなので、少しずつ慣らしながら水温を下げてあげてください。
もし耐えられる体力が残っていなかった場合は、どんな治療を試しても助からなかったと思ってください。
共通の注意点・まとめ
・治療中も治療後も水質悪化が進むため、毎日少量の水換えを行うこと
・塩水・エプソム浴、魚病薬、どれも使用時に大量の酸素を消費するため、必ずエアレーションはかけて溶存酸素量を保つこと。「守らないと病気進行の前に酸欠で☆になります」
・毎日餌食い、排泄物、体表観察などチェックを怠らず、小さな違和感にも気付けるようにすること
・熱帯魚「ベタ含む」以外の淡水魚でヒーターを使用しない飼育の場合は、水温毎に応じた餌量に調節し消化不良を防ぐこと
・定期的に濾過槽のメンテナンス、水換えを怠らないこと「低水温時は不要」
・異変があれば詳しく調べ、症状・状況に応じた適切な処置と早期治療を開始すること
だいたい、これぐらいは最低限守るべき項目だと思います。
最後に
ここで紹介した治療法やアドバイスは獣医師や魚類防疫士さんから聞いたアドバイスなどを含めて書きましたが、症状の種類や進行度合いによって治療成果が変動するため、100%治せると確約するものではありません。
なので当方の記事の治療法を実践して助からなかった場合において苦情や保証は受け付けませんので、自己責任で行います様ご了承願います<m(_ _)m>
そして、魚病薬や添加剤は規定量を守らないと危険なので、必ず用法・容量を守りながら使用してください。