病魚が知らせる治療を中止すべきサイン、塩水浴と薬浴時の注意点について

スポンサーリンク

飼育魚が病気になるとまず塩水浴、効果が無かった場合の次に魚病薬での薬浴と治療手順を踏む人が多いですが、塩水浴も薬浴も正しい手順を知っておかないと塩分濃度で病原菌が活性化し病状をさらに悪化させたり、薬浴も薬害ショックを起こして病気よりも薬害が原因で☆にすることに繋がってしまいます。
この記事では、トリートメント時に最低限知っておいてほしい注意点と、病気が重症化したことによって病魚が知らせる薬浴を中止すべきサインについて記載したいと思います。

塩水浴の注意点

塩水浴は淡水魚の病気治療に好んで使われることが多く、アクアリウム界では0.5%濃度の塩水浴が推奨されています。
塩水0.5%濃度とは水量10Lに対し5gの塩を入れるという方法です。
しかし病原菌の中には低濃度の塩分では活動的になり活性化するものがいるため、0.5%濃度では病気の進行速度が早まり悪化が進むという問題が生じることがあります。
その代表例がカラムナリス菌「症状:強い尾ぐされ、口ぐされ」であり、カラムナリス菌は塩分耐性を持つため、0.5%濃度で塩水浴をすれば治るどころか、より悪化していくことになってしまいます。

カラムナリス菌は細菌に分類されるため、治療には抗菌剤が有効であり、後述している主成分が抗菌剤の入った魚病薬で治療するか、塩類耐性のある病原体に対して有効な高濃度塩水浴を実施するかで治療すると良いです。

高濃度塩水浴とは水産業界ではよく用いられている方法で、塩分濃度5%で5分、3%で1時間、1%で3~4時間と濃度によって実施時間を短くしています。
これは浸透圧差で徐々に呼吸苦や血中濃度を過剰に上げるのを防ぐためで、魚類に悪影響が出始めない範囲で短時間にしています。
さすがに治療に慣れていないとこの濃度で治療するのはリスクが伴うため、0.6%~0.8%の塩分濃度で治療をすることをオススメします。

魚類の浸透圧耐久値は0.9%前後であるため、上記の範囲であれば1日以上の塩水浴治療も可能です。
ただ病魚は浸透圧調整機能が低下し本来の耐久値が低くなっている恐れがあるので、塩分濃度0.6~0.7%で治癒するか様子見するのが良いと思います。

Kyo
Kyo

塩投与は直接入れるのは避けて、別容器でしっかり溶かし切った塩水を入れてください。

ちなみに塩よりも塩化ナトリウムを使用する方が実は治癒回復が良い傾向にあります。

塩化ナトリウムは生体内に最も普遍的に存在する無機物質で、血清の無機成分の90%以上を占めています。体液浸透圧維持に働き、生物の健康を助けます。
なので塩化ナトリウムの純度が若干高い方が吸収率の流れが良い為、Kyoは高濃度塩水浴を行う時は塩化ナトリウムを使うことが多いです。

魚病薬を使用した薬浴の注意点

薬浴開始~終了までに注意すべきポイントをいくつか紹介します。

投薬は直接水槽内に入れないこと

魚病薬は顆粒であれ液体であれ直接水槽内に投与することは避けます。薬害ショックを起こすからです。
これを起こさないために、あらかじめ投薬する水槽の水を別容器に入れ、そこで魚病薬を溶け残しが無くなるまで、しっかりと混ぜます。
完全に溶けたのを確認した後、その薬水を水槽内にゆっくり投与しながら攪拌しましょう。

Kyo
Kyo

別容器はコップでもプラケースでも何でも良いですが、振って混ぜることが出来るペットボトルが効率よく溶けるのでオススメです。

いきなり規定量を溶かして入れないこと

薬品に耐性がある魚でも病気の種類や重症度によっては耐性が低下していることがあります。そこにいきなり規定量をドバっと入れてしまうと簡単に調子を崩すことに繋がります。
なのでまずは様子見として規定量の半分を上記の方法で投与し、30分~1時間ほど状態観察して、問題ない様であれば追加でもう半分を投与する様にしてください。
なお魚種や魚病薬の種類によっては魚体への吸収率が良すぎるもの、pHを急激に上げてしまうものがあるため、お使いの魚病薬をよく調べ、特徴をある程度理解した上で使う様にすることをオススメします。

薬浴中は必ずエアレーションをかけておくこと

魚病薬の成分の多くは効果を発揮する為に大量の溶存酸素を消費します。
そのためエアレーションをかけていないと、あっという間に病魚が酸欠を起こし、治療する前に☆にしてしまいます。

その為、薬浴中は必ずエアレーションをかけておく様にしてください。

またエアレーションの水流や気泡圧により病魚が流されたり、舞い上げられたりすることで、さらに衰弱させる危険性があるため、弱らせないような飼育者側の工夫が必要です。

上記の様な商品であればケース内でエアレーションするため、水中内で強い水流を起こさずに溶存酸素を増やすことが出来ます。
ただケースの底が開いているのでネットを被せる等して小型魚が入り込まない様に注意してください。

長期薬浴、短期薬浴で使用する魚病薬が異なることに注意

飼育魚の病気によっては長期決戦になるものと数日の短期決戦で終わるものに分かれます。
難病の多くは病原体が手強く、しつこいことが多いので長期決戦になるかと思います。
この時に使用する魚病薬の種類には十分注意が必要です。

例えばエロモナス病「尾ぐされ、体表出血など」に罹った病魚を治療するとしましょう。
その場合、エロモナスは細菌なので、抗菌剤を使うわけですが、大きく分けてサルファ剤とフラン剤の2種類があります。

サルファ剤はグリーンFゴールド顆粒「以下GFG」、フラン剤はエルバージュが有名です。
サルファ剤は長期薬浴に向く反面、耐性菌が出現しやすく、フラン剤は成分の魚体吸収が早く即効性があり、よく効く反面、長期薬浴には不向きです。
各魚病薬の薬効期間がGFGは5日~7日、エルバージュは24時間と定めているのは、このためです。

なのでどちらを選ぶにしても用法・用量は必ず守って使う様にしてください。

ちなみに上の例でKyoが治療するとしたら、軽症の場合はGFGで様子見、悪化が進行し重症化している場合は迷わずエルバージュを選択します。

進行病魚、重症魚をさらに掘り下げると、まず菌を叩くためにエルバージュで1日薬浴、薬浴環境が整っていれば、たいてい進行が止まるので、その後GFGに魚病薬を変えます。
進行が止まったのに、なぜGFGで再度薬浴するかというと、溶けたヒレや傷口から二次感染を防ぐためです。GFGで数日、重症度により1週間ほど長期薬浴し、露出した傷口が塞がれば、薬を抜いて、いつもの飼育水に戻すという感じです。

GFGは主に細菌感染の治療に使いますが、綿カビや水カビなど真菌類にも治癒効果があり、長期薬浴にも使えるので、常備薬として1つ持っておくと、いざという時に頼りになります。

その他、「持っておくと便利な常備薬」、「魚病薬の効果を最大限に発揮する方法」などを当HPのオススメ記事というカテゴリーに別記事で書いていますので、病魚の治療が上手くいかない時は読んでみてください。

スポンサーリンク

薬浴を中止するタイミング

魚病薬治療を中止すべきタイミングは、薬浴中に病魚が異常行動を起こし始めた時です。
異常行動とは投薬してから遊泳異常「フラつき、異常に元気になる」、エサの摂食ミスが目立つ、目の異常「目の白濁、突出」、底に横たわる、呼吸がかなり早い、活性低下などが起こった時です。

だいたい末期になると呼吸や遊泳など生命維持に使うエネルギーで限界になっており、規定量の投薬にも耐えきれないことが多く、薬剤や水質の少しのさじ加減で、あっさり☆にしかねません。

そのため判断目安として
・薬浴前から遊泳異常を起こしている
・ポップアイがある
・餌を食べれない
・溶存酸素が多い水面や循環水の側から離れない等がみられれば、浸透圧調整不全や臓器損傷、エラ病併発を疑い、まずは規定量の1/5から投与、30分ほど様子見して、さらに1/5追加で再様子見など慎重に分量を調整することで生存率が左右されます。

この時、少しでも異常が発生したら半分水替えして薬の成分を薄めたり、明らかな異常が出た場合は即薬浴を中止し、薬浴水と同じpHと水温の脱塩素水「カルキ抜き」にいつでも移せるといった準備が必要です。

これで幾分か☆になる確率を下げられますが、すでに手の施しようがないほど弱っていた場合は助からないことも普通にありますので、必ず助かるといった概念は捨てて、とにかく助けたいという気持ちで精一杯全力を尽くしてあげてください。

薬浴の中止を強いられている段階では餌を与えないこと「絶食療法」

中止を強いられる段階で何とか生存できている場合、餌を中止し、消化不良を起こさない様にしましょう。
消化不良を起こさなくても、生命維持でギリギリの病魚は消化にエネルギーを持っていかれることで生存出来なくなることがあります。
特に重症魚の場合は餓死するよりもエネルギー消費で☆になる可能性が高いので、無理に食べさせない様にしてください。

絶食療法を行う必要がある時は、たいていが、かなり重体(臓器障害、損傷・破裂など)になっているケース。餌を中止し一旦、消化器官や臓器を休ませて回復させます。
異常行動が減り、餌を欲しがり出すなど食べられそうかなというぐらい元気が戻ってきていると感じたら少し与えてみます。
餌を食べだしても消化器官は弱っているはずなので、与え始めて数日間は一口、二口くらいの少量でとどめましょう。
少しずつ与えずに今までと同じぐらいあげると☆になる魚が出てくるので分量厳守は徹底し、回復に専念させてください。

餌を与え始めると、病魚によって吐く様な仕草「拒否反応」や消化エネルギーで衰弱化しやすいので、順調にエサを食べ始めたとしても安心せずに要観察、フンの状態も毎日チェックすること。
気を抜いて油断すると、病魚にエサをあげたら何故か☆になるという考えを持つようになってしまいます。

手軽に薬浴効果を消すことが出来る小技紹介

薬浴を即中止したい時は水換えか全換えでリセットするくらいしか方法が無いように思いますが、実は手軽に効果を打ち消す方法があります。
それはアクアセイフを入れて中和させること。
全ての魚病薬の効果を打ち消すわけではないですが、GFGやグリーンFクリアー、マラカイトグリーン液「アグテン、ヒコサン等」においては薬剤効果をある程度中和させることが出来ます。

手軽で便利な方法ですが、1つ大きな注意点があって、アクアセイフは直接入れないこと!
粘膜保護成分が配合されているので、液の粘り気がエラ内に張りつき窒息を起こすことがあります。
なので魚病薬と同じようにバケツなど別容器に薬水を入れて、そこでよーくかき混ぜて、溶け残りが無いようにして薬浴水槽に投与してください。

以上、長文になりましたが、「病魚が知らせる治療を中止すべきサイン、塩水浴と薬浴時の注意点」として記事を紹介しました。

観賞魚の病気は進行が早いものが多く、少しの加減で生存が左右されるため、ベテラン飼育者でも難しい面があります。
当HPでは魚病防疫に対する知識を取り入れて観賞魚の病気治療や治療時の注意点などを紹介しているため、知りたいキーワードを検索ワード画面に打ち込んで、各記事を参考に治療してみてください。

淡水魚も海水魚も共通で上手く飼育するためには、病気になっても治すことの出来る治療スキルを身につけなくてはならないので、長寿を全う出来るように一緒に頑張っていきましょう(^^♪

スポンサーリンク